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大阪高等裁判所 昭和33年(ネ)1309号 判決

昭和産業相互銀行

事実

被控訴人(昭和産業相互銀行)の主張事実。控訴会社(A)の取締役西楠吉(甲)は昭和三一年八月二〇日金額二〇万円の約束手形一通を訴外会社(B)宛に振出し、B会社はこれを被控訴銀行に裏書譲渡した。

控訴人(A)の抗弁。甲はB会社の取締役でもあるのに、本件手形の振出交付につき、A会社とB会社の双方においてそれぞれ取締役会の承認を受けていないから、本件手形の振出交付は無効である。

理由

証拠によれば、西楠吉(甲)はA会社の取締役兼事実上の大阪支店の支店長として手形振出の権限を有していた昭和三二年八月二〇日A会社を代理してB会社に宛て本件手形を振出し、B会社はこれを被控訴銀行に裏書譲渡したので、被控訴人はその所持人として支払期日の翌日である昭和三〇年一〇月一日支払場所に呈示して支払を求めたが、その支払を拒絶せられたことが認められる。

控訴人主張の抗弁についてみるのに、西楠吉(甲)が本件手形の振出交付当時右受取人会社(B)の取締役であつたことは争のないところであるけれども、証拠によれば、同人は当時B会社の代表取締役でなかつたことが認められるのであつて、このように振出人会社(A)の取締役で手形振出の代理権限を有する甲が振出人会社(A)を代理して受取人会社(B)に宛て手形を振出交付する場合、偶々甲が受取人会社(B)の平取締役であつても、右手形の振出交付行為が唯それだけの理由で振出人会社(A)ならびに受取人会社(B)のいずれの側からみても商法第二六五条の規定に触れるものとはいい難いから、控訴人主張の抗弁はすでにこの点において理由がない。

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